中村一八の知心コラム


拙速は巧遅に勝る

教わる姿勢と教わるプロセス

76%の完成度で期限内に間に合わせるAくんと、約束の期日を過ぎるが100%の完成度で仕上げてくるBくんがいるとします。さて、あなたはどちらを評価しますか。。

意外と勘違いしている人が多いのですが、評価されるのは納期を守るAくんです。上司が部下に仕事を頼むとき、「いつでもいいから…」という仕事などありません。多くは「いつまでに」という期限が付きます。どんな仕事もその期限を過ぎれば、価値はゼロになるからです。

小説家や漫画家はどんなに良い作品を仕上げたとしても、締め切りに間に合わなければ、信頼だけでなく、仕事も失ってしまいます。二度と仕事の依頼が来なくなるのです。ビジネスとは時間との勝負です。わずか数分の遅れが致命傷になることもあります。

拙速は巧遅に勝る

中国の兵法書「孫子」には、「拙速(せっそく)は巧遅(こうち)に勝る」という格言があります。拙速とは、つたなくても速いことであり、巧遅とはたくみでも遅いことです。つまり、完璧でなくとも「仕事が早い」にこしたことはないという意味です。私の経験でも、巧遅(こうち)>拙速(せっそく)の構図でうまくいったためしがほとんどありません。

ところが、完璧さを追求するあまり、いつも期限がぎりぎりになる人を見かけます。完璧さを心掛けること自体は、とても素晴らしい考え方です。ただし、時間がかかりすぎて 機を逃しては元も子もありません。

巧速への道

「完璧だ」と自分が思っていても、相手が同じように「完璧だ」と感じていただけるとは限らず、独りよがりになる危険性があるということです。そこまでの付加価値は求めていないとか、それだとコストがかかりすぎるとか、お客さまの求めているニーズとズレが生じることがあるからです。

仕事が遅い人

またズレがなくとも、時間の経過とともにお客さま自身の考えが変化することもあります。そうしたリスクを回避するには、スピードです。

たとえ、60点の仕上がりでも、「まだ未完成ですが…」と迅速に開示していけば、お客さまとのズレに気づいたり、修正する時間も捻出することが可能となります。

私が尊敬する人たちは、みな"早くてうまい"巧速(こうそく)”です。しかし、彼らは社会人一年生から「巧速」だったわけではないはずです。成長過程において「巧遅よりも拙速」ということを意識し、仕事に打ち込んだその結果として「巧速」の仕事術を身につけたのでしょう。

もちろん、理想は「巧速」であることに間違いはありません。しかし、「拙速」か「巧遅」かと二者択一の判断を迫られるのなら、躊躇(ちゅうちょ)なく「拙速をとる」というのが個人的な見解です。早さは、とりわけ重要です。スピードこそ、信頼です。

仕事を早く仕上げることは、信頼を得ることにつながります。「対応の遅さ」が、相手に不利益をもたらす結果となっていることが少なくありません。仕事がずば抜けて早い人は、それだけで光り輝くのです。仕事ができる人は、それをよく知っています。

矛盾への挑戦

お客さまや上司から命じられた仕事はすぐに取りかかることです。今日仕上げなければならない仕事は、絶対に明日に延ばさないことです。仕事に粗さは "多少"残っても、処理スピードを高めることを心掛けましょう。

ただし、"多少"というのがツボであり、拙速といっても限度もあります。いくらスピードが早いといっても、あまりにも粗雑すぎたり、内容がずさんすぎると、当然ながら信頼を大きく損ねます。

時間切れは論外として、品質の最大化と時間の最短化という矛盾への挑戦が、拙速という真の意味を読み解くコツといえるでしょう。


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