報告ができていない人の特徴は、いつも上司から「あの仕事どうなった?」とか「いまどんな状況?」などと先に聞かれてしまう人です。報告は重要な仕事のひとつです。仕事ができる人ほど報告の重要性に気づいています。
上司から見て安心して仕事を任せられる部下とは、仕事は早いが報告ができないAさんではなく、仕事は遅くとも報告を自ら進んで積極的に行うBさんの方なのです。
Aさんは「こんな小さな情報はわざわざ報告するまでもない」など自分の勝手な解釈で決めつけたり、「面倒だな」とか「あとで伝えればいいや」など報告の手間を惜しむ人です。メール(文章)で伝えたから、あるいは上司の隣で仕事をしているのだから、イチイチ報告なんかしなくても『わかってくれているだろう』と考えるのは大間違いです。
報告を受けることによって、上司は部下の仕事の進捗状況を把握することができます。どんなに素晴らしい仕事をしても、報告がきちんとできないような人は上司には評価されません。
「あの件どうなった?」と上司に催促されるようではすでに『失格』なのです。「あの件どうなった?」の言葉の裏には「こまめに仕事の進捗状況を報告してほしい」という上司の願いが含まれているのです。
報告する際心掛けるべきは、まず最初に結論から述べるということです。何はさておき、結論です。たとえば、「結論から申しあげますと、○○の件につきましては○○という結論になりました。理由は…」が正しい報告の仕方です。
大事なことは、上司の立場を理解して報告することです。上司がもっとも聞きたいことは何か。それは、結論です。うまくいったか、いかなかったか、結論が知りたいのです。
ところが、プロセスばかり長々と説明して、なかなか結論をいわない部下がいます。
「昨日A社を訪問しました。駅から結構距離がありまして、道に少し迷ってしまいました。しかも、日差しも強かったので、背中が汗ばみ…」と時間軸に沿って延々説明するのです。
苦労談や経過も順を追ってすべて話したい気持ちはわかりますが、とにかく先に結論をいうことが大切です。結論を先に述べ、次にその理由(根拠)、そして最後に経緯や背景を述べます。簡潔に結論から話すようになるには、常日頃から報告事項を整理しまとめる癖をつけておくことが大切です。
約束の期日までに仕事ができそうにないとき、状況が悪化しそうなときなどは、誰でも報告などしたくないものです。叱られるかもしれないと身構えて報告が遅れがちになるのも理解できます。
しかし、自分だけでは手に負えなくなり、トラブルや事故が起こってからでは遅いのです。そのため、悪い報告ほど一刻も早く上司に伝える必要があります。「なんとか自分だけで処理しよう」と考えないこと。自分で抱え込まず、すみやかに上司に報告をして対応策や指示を仰ぐことです。
「悪い報告ほど早く」は報告の鉄則中の鉄則。弁解や言い訳は二の次、三の次です。どんな小さなことでも、悪い報告は真っ先に上司に伝えるように習慣づけましょう。
たとえば、上司から「来週の商談で使用する企画書を作成してくれないか」と指示されたとします。あなたはどのタイミングで報告を行うでしょうか。
指示された仕事が完了したらただちに報告をするのは当然のことですが、「企画書作成の件ですが、ただいまの進捗状況をご報告申しあげたいのですが…」と途中経過もきっちり報告できるようになってはじめて一人前といえます。上司は部下に仕事を任せたとき、「ほんとうにやってくれているだろうか」とか「どのくらいまで進んでいるだろうか」など内心は心配で心配で仕方ありません。
それゆえ、商談の前日にも、ひと言「企画書は完成いたしておりますので、どうかご安心ください」と報告することが大事になります。すると「○○さんに任せて良かった」と上司は思ってくれるはずです。
私が懇意にしているある会社のトップ営業マンは、訪問先から一歩外にでるとすぐに上司にメールを入れます。1日10社訪問すれば、10回『ミニ報告』してくるわけです。
「○○社を訪問し、ただいま終了しました。結論は○○です。詳しくは18時に社に戻ってからご報告いたします」。わざわざ途中途中にメールで報告しなくても、その日中に会社に戻ってから上司に詳しく説明できるにもかかわらずです。それでも、電話かメールで終了後すぐに必ず一本報告を入れるのです。
なぜか。半日でも、たとえ一時間でも、事の成り行きを心配している上司の気持ちを察しているからです。こまめに中間報告をしてくれる部下に上司は信頼を寄せていきます。こまめな報告ができる人は相手に安心感を与え、お客さまや上司から絶大な信頼を得られる人となるのです。
報告の上級者≠ニは、客観的な事実と主観をきちんと区別して上司に伝えられる人です。主観とは自分の考えのことです。なぜ、事実と主観を分けなければならないのでしょうか。それは、報告を受ける際、上司がもっとも知りたいのは、客観的な事実だからです。事実を正確に把握してこそ、上司は正しい判断を導き出すことができるのです。
たとえば、「ボクの彼女は美人です」という報告はいかがでしょうか。一見、きわめて明快でわかりやすい表現です。ところが、どんな女性を美しいと思うかは好みもあって人それぞれです。
ある人は「美女だ」と思っても、別のある人からは「そうかなぁ」というのが、主観というものです。では、「女優の○○さん似で、とても美人です」という報告はいかがでしょうか。これも、適切ではありません。「女優の○○似」というのも、やはり主観だからです。人によって「イエス」とも「ノー」ともとれるからです。
事実報告として適切なのは、本人を連れてきて紹介したり、いくつかの写真をみせて「このような人物です」と事実を示すことです。その後、「ボクは彼女が美人だと思いますが…」と第一人称で伝え、事実と主観を区別することが重要なのです。
現場では、事実と主観をごちゃまぜにして上司に報告している光景をよく見かけます。どれが客観的事実で、どれが主観的に述べられたものかがわからない状態になっているのです。
報告者の主観が入り混じった報告を受けると、上司としては正しい判断を下せなくなります。これは実際にあったエピソードですが、20代の社員から次のような報告を受けました。
「取引先のA部長は変な人です」。「変な人?」と思わず聞き返すと、「はい、変な人です」という自信に満ちあふれた返事でした。「なぜ、そう思うの?」と再度聞き返すと、「だって、毎朝出勤前に一時間ほど自宅周りをジョギングしているんですよ」という答えでした。これには驚きました。彼にとっては、出勤前のジョギングがどうにも「アンビリーバブル」な出来事だったようです。
出勤前のジョギングを変わっていると感じるか、健康的で素晴らしいとみなすかは、世代や人の価値観によって異なります。上司は部下の報告に基づいて判断を下します。「変な人?」という部下の報告を鵜呑みにしてしまうと、上司は誤った先入観を持ち、「変な人なら、今後の取引は控えよう」と誤った指示を出すことにつながる恐れがあります。
それゆえ、報告は必ず事実と主観を分けなければならないのです。いつも脚色せず、事実をきちんと伝えられようになってくると、やがて上司から「君はどう思うか」と主観を求められるようになるのです。
どんな会社でも、ほうれんそう(報告・連絡・相談)が大事だと教えられます。しかし、相談は別としても、報告と連絡の違いは何かと尋ねられると、答えに窮するかもしれません。報告と連絡の境界線は非常に曖昧です。報告と連絡の違いは辞書を引いても、その明確な違いを特定することはできません。
ビジネスで一般的な解釈は、報告とは、命令や指示を受けている仕事について上司に結果を伝えることです。伝える対象者も上司などに特定されていて、主に組織の縦方向に伝えられます。連絡とは、報告よりも広範囲で相手が特定されず、組織の縦方向だけでなく、横方向にも伝えられます。
飲み会における「連絡」と「報告」を考えるとその違いがより明確になります。飲み会における「連絡」というのは、これから行われる飲み会の日時や場所のことについて誰かに伝えることです。ところが、「報告」とは飲み会を実施したあと、みんな盛り上がったのか、有意義だったのかを誰かに伝えることです。
たとえば、飲み会の真っ最中に本日の欠席者に電話して「いま、盛り上がってるよ」と伝えることは、状況"連絡"とはいわず、状況"報告"という言葉が適しています。
また、火事が起きたとき、「どこそこで火事が発生しました。至急、消防署に"報告"してください」とはいいません。この場合、消防署に"連絡"してください、が正しい表現でしょう。このように「連絡」とは、これからのことを伝えることであり、「報告」とは、既に起こったことを伝えることです。両者を厳密に区別する必要はありませんが、「連絡」は未来について、「報告」は過去について、と覚えておくとよいでしょう。