中村一八の知心コラム


問題分析力とは何か

問題とは何か

あなたが飲料メーカーの営業マンだとします。得意先の店長から相談を受けました。得意先とは、業績不振にあえいでいる地域密着型の独立系スーパーです。最近、店舗全体の販売成績が著しく落ちてきた、というのです。さて、この場合、問題とは何を意味するのでしょうか。売り上げの落ち込み、という現象が問題ではありません。問題とは、現状とあるべき姿のギャップのことです。あるべき姿、つまり期待値と実績値との乖離こそ、「問題」というわけです。

問題の多くは、それを引き起こすことにつながった原因があります。「なにが、その原因なのか」を突き止めようとするとき、 問題を「分析」する必要があります。

問題を明確にする

問題を分析するにあたって、まずなすべき第一は、「問題とは何か」を明確に定義することです。A社の場合でいえば、いつも(あるべき姿)の月商が3,000万円だったにもかかわらず、ここ最近は、2,000万円前後で低迷しているとします。

3,000万円から2,000万円をひくと、1,000万円となり、この1,000万円という数字のギャプこそが「問題」と定義されるのです。ここでは、売り上げ対前年比の○%ダウンとか、平均客単価○円マイナスとか、一日当たりの平均来店客数が○人減少しているなど、望ましいのは、具体的に数字で「問題」を把握しようとすることです。

原因を幅広く考える

第二に、その「原因」を突き止めることです。「なぜ?」そのような問題が発生したのか、その原因の可能性について幅広く考えていきます。先入観や過去の経験値にとらわれず、頭をまっさらにして、考えられる原因をあらゆる角度から列挙することです。

たとえば、同じ商圏内に強力なライバルが出店してきたとか、チラシなどの広告費・販促費を大幅に削減した影響だとか、人材教育がしっかり行き届かず、お客さまからの苦情が殺到しているなどです。このように「最近、販売成績が落ちてきた」という現象は同じであっても、その原因はひとつとは限らず、また複数の原因が複雑に絡み合っている場合も少なくないのです。

当然のことながら、原因が何であるかによって、解決のための打ち手やアプローチはそれぞれ異なります。それゆえ、分析にあたって、見逃したり、抜け落ちている部分はないかと、原因の可能性を幅広く考えることは非常に重要となるのです。

そして、根本原因を探り出すことこそが最終ステップとなります。本質に迫るには、「なぜ?」「なぜ?」思考が効果的です。「なぜ?」を繰り返していくことで、問題の核心に近づいていくからです。

たとえば、なぜ、業績が落ちたのか、それは…店舗全体に活気がないから…。なぜ、活気がないのか、それは… お客さまが来店したくなるような魅力的な売り場づくりになっていなかったから…。なぜ、魅力的な売り場づくりにはなっていなかったのか、それは… 不親切な陳列になっていたから…。なぜ、不親切な陳列になっていたのか、それは…陳列まで社員の意識が行き届かなかったから…。なぜ、意識が行き届かなかったのか、 それは…社員のモチベーションが低下しているから…。なぜ、モチベーションが低下しているのか、 それは…給料が遅配しているから…。

このように「なぜ?」を繰り返していくと、給料の遅配という根本要因にたどり着くわけです。

モノゴトを構造化する

このように、問題分析とは、問題のメカニズムを可視化することです。可視化には「構造化」が役立ちます。モノゴトを「構造化する」という概念は、一般的にはあまりなじみのない言葉かもしれませんが、私たちのようなコンサルティング業界では、きわめてオーソドックスな概念です。

構造化とは、思考や情報をわかりやすく、モレなく、整理・分類する手法です。たとえば、人間を「構造化」して考えてみましょう。留意すべきは、「モ・ズ・ダ」の視点です。「モ・ズ・ダ」とは、モレなく、ズレなく、ダブリなく、という視点で考えよという意味です。

たとえば、「人間を分類すると、男性と女性の二種類だ」はどうでしょうか。この構造化には、モレも、ズレも、ダブリもないはずです。「人は、既婚者か、未婚者のいずれかだ」も、合格でしょう。ただし、二種類に分けることが構造化ではありません。

「A型、O型、B型、AB型」の血液型にすると四分類ですし、「おとめ座、てんびん座、さそり座…」の誕生星座なら12分類ですし、「北海道、青森、岩手…」など出生地を都道府県別にするなら、47分類になります。「運転免許書をもっている人、もっていない人」「メガネをかけている人、かけていない人」「日本人と日本人以外」など、構造化の基準は何でもいいのです。

ただし、何度も繰り返しますが、「モ・ズ・ダ」に反すると、構造化とは呼びません。たとえば、「太っている人とやせている人」などです。太っても、やせてもいない人は"モレ"てしまうからです。また、「太る」「やせる」という基準や境界線は、法律や規格で決まっているものではなく、非常にあいまいなもので、人によって感じ方や見方が違うからです。

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