中村一八の知心コラム


ポッドキャストで情報収集

できるようで、なかなかできない

ニューエアには、緻密で責任感が強く、安心して仕事を任せられる有能なMさんがいます。先般ある駅で、そのMさんと待ち合わせをしました。約束した時間に行くと、すでにMさんは到着していました。そこから訪問先まで歩いて向かったのですが、互いにはじめての訪問先でしたので、少し不安でした。

ところが、Mさんは地図も持たず、スマートフォン等のナビも活用せず、「こちらです」「その角を右です」とスイスイ私をリードしてくれます。

段取り力とは何か

不思議に思って尋ねてみると、事前に目的地まで自分の足で歩いてみて、すでに道順や所要時間の確認をしていたというのです。これには驚き、感動しました。私は日頃、さまざまな部下と行動をともにすることが多いのですが、一見だれでも簡単にできるような段取りであっても、実際にはなかなかできることではありません。

Mさんのおかげで、道に迷うことなく、訪問先にスムーズに到着できたのはいうまでもありません。それだけでなく、私自身心に余裕を持つことができ、とても晴れやかな気持ちで、その後の商談に臨むことができたのです。

目配り、気配り、心配り

Mさんのすごさは、段取りのよさです。Mさんと一緒に仕事をすると、いつも段取りの重要性に気づかされます。ビジネスにおいて段取りのよい人というのは、目配り、気配り、心配りのできる人です。仕事は一人ではできません。相手への配慮を忘れないという相手本位の心掛けが、段取り力をレベルアップさせるのです。

私との待ち合わせの時刻よりも、早めに到着して"予行演習"を行うという行為は、私が極度の方向音痴であることを知った上での行動であり、「道を間違えてはいけない、自分がしっかりしないといけない」という上司である私に対するMさんのおもいやり、やさしさ、配慮だと感じたのです。

Mさんは決して要領がいい人とは思いませんが、そのことをご自身でよく理解されており、その分ひと一倍、段取りに注力され、素晴らしい成果を出し続けているのです。

先を読む力

段取り力とは、先を読む力です。行動する前に、先読みをすることこそ、段取りの要諦といえます。先読みとは、どのように仕事を進めれば、早くて効率的か、というのを先回りして、頭を使って考えることです。次のスリーステップを踏むことで、段取り力は確実に磨かれていくのです。

まずファーストステップとして、"着地点"を明確にすることです。"着地点"とは、どこを目指すのか、なにを実現したいのか、という仕事の目的であり、ニューエアではその目的を"着地点"という共通言語で表します。仕事には必ず目的が存在します。その目的である着地点をくっきりはっきりイメージすることから、段取りがはじまります。

シナリオを描く

段取り力とは何か

セカンドステップは、着地点にたどり着くまでのシナリオを描くことです。山に登るという目的であっても、標高500mクラスの山と、標高3,000m級の山とでは、難易度も、山頂へのアプローチも変わります。目指すべき着地点が異なれば、その着地点にたどり着くためのシナリオはまったく異なるということです。

仕事というものは、山の天候と同じように、突発的な事態が起こるなど、刻一刻と状況は変わります。そのため、順調なシナリオ、逆境のシナリオ、最悪のケースも含めて、ありとあらゆるパターンを想定しなければなりません。シナリオを描くことで、着意点までの手順がわかり、それぞれの仕事の過程でやるべきことがリストアップされます。

準備以上の成果なし

最終ステップは、シナリオ実現に向けての、事前準備です。段取り力を磨くには、料理を習うといいといわれます。料理が上達するほど、いくつもの料理を同時進行でつくることができるようになるからです。同時進行的に複数の作業を行う決め手となるのが、事前準備です。


なかでも、プロの料理人は食材の「下ごしらえ」にこだわり、手間をかけます。「下ごしらえ」とは、材料を切りそろえておいたり、下味をつけておくなど、調理に取り掛かる前にしっかり準備することです。仕上がる時間だけでなく、料理の出来が違ってくること、すなわち「準備以上の成果は望めない」ことをよく知っているため、めんどうであってもプロは「下ごしらえ」に手を抜くことはしないのです。


シナリオも立てず、準備もせずに行動するということは、定休日や営業時間も調べず、予約もとらず、レストランに向かうようなものです。

その結果「あれぇ?おかしいなぁ、入店できないぞ」という想定外の結末にたどりつき、嘆き、落胆してしまうことになるのです。運が悪かったからではなく、段取りが悪いから、場当たり的にものごとを進めてしまうからぶっつけ本番になってしまい、仕事がうまくいかないのです。

書き出す習慣づくり

段取り上手な人は、仕事に着手してから、その仕事が完了するまでの自分の動きが頭の中に完全にイメージングできる人です。

そのためには、モノゴトを推敲する時間を捻出することが大切です。かくいう私も、毎朝六時に出社し、7時までの1時間は、必ず段取りの確認に費やしています。

社会人になって20年以上、ずっと朝型のビジネススタイルを続けていますので、その経験値から「朝の1時間は夜の3時間に匹敵する」ことを私は確信しています。朝は来客もなく、電話も鳴らず、シーンとオフィスは静まりかえっているため、集中して仕事にとりくむことができるからです。

昨日のふりかえりを一通り行った後、今日一日なすべきことを洗い出しながら、仕事の優先順位を決めたり、書類を整理したり、社員への指示内容を確認したり、ひとつずつ手順やポイントを押さえ、文章として書き出していきます。ひらめきやアイデアを思いついた瞬間に書き留めておかないと、すぐに忘れてしまうからです。この「書き出す」という作業に、とりわけ私は力点を置いています。

段取り力を高めるコツ

良質な仕事は、良質な段取りから生まれます。段取りのよさとは、逆算でモノゴトを考えられる思考のことです。段取りとは、着地点までの仕事を細分化し、それぞれの細分化された仕事に応じて、何をいつまでに着手すべきか、という期日を決めシナリオを立て準備することです。着地点から物事を考えるクセづけを行うことが、段取り力を高めるコツといえるのです。



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