中村一八の知心コラム


ナフキンを使いこなそう

ナフキンを見れば、レベルがわかる

マナーを心得ている人が、できていない人を見かけると、意外と気になるものです。心を痛めたり、会話に集中できなくなったりします。他の人に迷惑をかけてはならない、がマナーの定義とするならば、マナーを知らないというだけで、周囲を不愉快な気持ちにさせてしまっている危険性があります。

ナフキンの役割

ナフキンを使うこなそう

ナフキンは、大きく分けると3つの役割を担っています。ひとつは、手や口の汚れを拭くためにあります。もうひとつは、パンくずなどが落ちて膝を汚さないようにです。

ただし、ソースなど飛び散る汚れを未然に防止するエプロンとしての機能は少ないということです。ナフキンを前掛けのように胸元から下げている人を見かけますが、これはナフキンの用途を少し勘違いしている人です。見た目にもあまりよいものではありません。

3つ目は、給仕がサービスしやすいように、サインの役割を担います。たとえば、用意されたナフキンを使わずに、自分のハンカチで口の汚れを拭うと、給仕やソムリエはがっかり肩を落とします。

このナフキンは使用するに値しない、という合図を送っているようなものだからです。なにかサービスに問題があったのか、どこか汚れていたのか、とお店のスタッフたちはその仕草にハラハラと気をもむ結果となるのです。

ナフキンを広げるタイミング

ナフキンをひざの上に広げるタイミングは、早すぎず、遅すぎず、を意識することです。席に着くやいなやナフキンをすぐに広げるのは、ビジネスの席では控えたいものです。ナフキンを広げるという行為は、「私はいただく準備ができました」というサインになります。

そのため、着席早々広げると、なんだか料理を催促しているように見られかねないからです。なお、公式の席では、主賓がナフキンを手に取るまでは、自分の膝の上にナフキンをのせることは控えるべきです。一方、席についても、いっこうにナフキンを広げる気配がないと、給仕も困ります。

お料理が運ばれてきて、「お客さま、どうぞナフキンをお取りください」と声を掛けられないようにしましょう。同席者にも恥ずかしい思いをさせてしまいます。オーダーを終えてから、食事が運ばれてくるまでの間に、ひざの上に広げておくとよいでしょう。

ナフキンの折り方

広げ方の基本は、二つ折りです。二つ折りは長方形でも、三角折りでも構いません。ナフキンの折り目を自分側に向け、ひざの上に広げるのがオーソドックスなスタイルです。

二つ折りの輪を手前にするのは、手に取りやすいということよりも、重心が安定し、ひざの上から落ちにくくするためのちょっとした工夫です。なお、ナフキンを二つに折らず、全面に広げること自体マナー違反ではありませんが、どうしてもズレやすく、落ちやすくなるため、あまり主流ではありません。

ナフキン活用法

口を拭くときは、少しうつむき加減になって顔を近づけ、二枚重ねになっている上側の一枚をめくり返すようにして、ナフキンの裏側を使います。これは、拭いたあと、元に戻せば汚れのついた面を隠すことができるからです。自分のズボンやスカートに汚れも付着しないという利点もあります。加えて、ナフキンの四隅の裏側を使って、ひねり返すように使用した方が、より上品に映ります。

グラスの縁につく脂分は、見た目にあまり美しいものではありません。ミネラルウォーターやワインなどグラスに口をつける前に、こまめにナフキンで口元を軽く押さえるようにすると、口紅や食事中に口元についてしまった脂分がグラスに付きにくくなることも、覚えておきたいナフキンの活用法です。

また、魚の骨や果物のたねなど、食事中なにか口から出さなくてはいけない場合、そっと口元を隠すためにナフキンは重宝します。もしも、ナフキンを落としてしまったら、ナイフやフォークなどのカトラリー同様、自分では拾わず、ウェイターを呼んで、新しいものと交換してもらいましょう。

おしぼりとナフキンの関係

一方、おしぼりとナフキンの両方がセッティングされるレストランもあります。ナフキンもおしぼりも、手を拭くためのアイテムとして共通しているものの、口を拭くことを許されるアイテムはナフキンだけです。おしぼりは、あくまで手を拭くためのものです。そのためおしぼりは、手を拭く以外に用いるのはマナー違反であり、おしぼりで顔をふくことは厳禁とされています。

もちろん、おしぼりでテーブルの上を拭くことはもってのほかということになります。テーブルに両方用意されていれば、手を拭くときはおしぼり、口を拭くときはナフキンと使い分ければいいでしょう。

途中で席を立つとき

食事中は、原則として席を立つことは慎むべきです。トイレが心配ならば、着席前にすませておきましょう。食事の途中でお手洗いに行きたくなっても、せめてメインディッシュが終わるまでは控えたいものです。

一般的にフレンチなどのコース料理は、オードブルからはじまってメインディッシュ、フロマージュ、デセール、コーヒーまでが一連の流れになります。前半の締めがメインディッシュとなり、後半の第二章はフロマージュからはじまるという考え方です。それゆえ、お手洗いのタイミングとしては、メインディッシュ後の小休憩が絶好のタイミングとなるわけです。

このように、やむをえず食事中に席を離れる場合、ナフキンは少したたんで椅子の上に置いて離れることがポイントです。椅子の背もたれにかけるのは、汚れのついたナフキンが同席者の視界に入ってしまうため、控えた方がいいでしょう。一流のフレンチレストランになると、席を離れている間に、スタッフが椅子の背もたれにかけてくれることがありますが、これは新しいものと取り替えているからこそできるサービスといえます。

また、食事終了のサインとなってしまうため、テーブルの上に置くことも避けましょう。テーブルの上にではなく椅子に置く、というのが「まだ、食事中です」という途中退席の合図となるのです。

退席する場合

ナフキンを使うこなそう

さて、食事が終わって退席する場合、使用した部分が見えないように、ふわっと中に折り込む感じでナフキンをたたんで、テーブルの上に置きます。これが、「ごちそうさま」の合図です。このとき、意識的に角と角をずらすなど、無造作に置くことです。

使用したナフキンをきれいにたたんでしまうと「サービスが悪かった・料理が美味しくなかった」という意味になるため、注意が必要です。

すでに自分が使用して汚してしまっているナフキンを、元通りきれいにたたむという行為は、「実に不愉快だった。食事はなかったことにしてほしい」という不満足の意思表示とされています。ただし、ここでもナフキンを広げるタイミングと同様、主賓や目上の人よりも、先に置かないことです。

丸暗記はダメ

このように、ナフキンを使いこなすことは、すなわち機能美の追求といっていいでしょう。マナーの行為ひとつひとつには、すべて合理的な意味が隠されています。単にマナーを丸暗記するのではなく、「なぜ?その場合、そうしなくちゃいけないのか」と理由やその由来を探ろうとすることです。

それでも、わからないことがあれば、恥ずかしがらずに「このような場合、正しいマナーはどうすればいいのでしょうか」とお店の人に尋ねてみてもいいでしょう。大事なことは、わからないことをわからないままにしない、あやふやな知識のままにしない、という基本的なことです。

品性と教養を高めよう

テーブルマナーとは、いかに相手を思いやるか、いかに見た目に美しくスマートに見せるか、という先人の知恵の結集といえます。ナフキンをスマートに使いこなせるようになるには、実践あるのみです。食事の席では、だれかに見られている、という意識を常にもつことです。

ナフキンならナフキン、カトラリーならカトラリーとあるテーマを決めて、料理、サービス、雰囲気、そのすべてを高い次元で満たす一流のレストランで、定期的に自分を磨くことも、自己投資の一環として必要なことでしょう。こうした努力の積み重ねが、品性を養い、教養を深めていくことにつながっていくのです。


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