中村一八の知心コラム


傾聴力とは何か

よい質問とは何か

良い質問

商談とは、売り手と買い手の接点の場です。買い手の心理としては、売り手に対して「売り込まれないようにしよう」「うまくのせられないようにしよう」と、防御本能が少なからず働くものです。身構えている相手に対し、緊張をほぐしたり、警戒心をとりのぞくためには、なんといっても質問力がカギを握ります。

初対面や気むずかしい相手に受け入れられる最大のコツは、よい質問をすることです。よい質問とは、「ほぉーっ」と相手が感心し、相手が思わず本気になって、答えたくなるような質問のことです。

社長の抱える問題を聞き出し、解決するのが経営コンサルタントという仕事です。そのため、私たちの業界では、相手の心の奥底に潜む考え方などを自然に引き出すことができるようになれば、一流の仲間入りといわれています。

二者択一式と自由回答式

二者択一式と自由回答式

質問形式を大きく分けると、二者択一式と自由回答式に分類されます。二者択一式とは、「あなたはリンゴが好きですか?」などのように、「はい」か「いいえ」のいずれかで答えられる質問のことです。

これに対し、自由回答式は「あなたはどんな食べ物が好きですか?」などのように、自分の言葉で自由に語ってもらう質問のことです。状況や場面に応じて、段階を踏んで質問形式を変えていくことが求められます。

たとえば、初対面の相手に向かって、 いきなり「最近の景気は、いかがですか?」という自由回答式の質問を投げかけるのはどうでしょうか。相手が答えに窮する場合もあるし、「景気はよくないですね…」と暗くつぶやかれると、後が続きません。

また、相手によっては圧迫感を感じたり、心理的負担も強く感じる人もいるでしょう。助走なしでは、走り高跳びが高く飛べないのと同じです。スムーズな会話の流れをつくりだすためにも、商談の導入部においては、二者択一式の質問を採用するのが効果的です。

具体的には、相手に「はい」とか「そうですね」 と言葉に出してもらえる質問を意識的に考え用います。「はい」という言葉には、"共感"と"素直"と"肯定"の三つの要素が含まれています。どれほど感情的になっていても、イライラしていても「はい」をいい続けると、それらの感情が和らいでいくのです。

実際に、怒りながら「はい」をいい続けることはむずかしいものです。「はい」と言葉にだしているときは、人はなかなか反感をもったり、否定的な考えには至りにくいのです。

はい、の積み重ね

たとえば、「最近はいいお天気が続きますね?」「そうですね」「○○新聞にも載っていましたが、今後、御社を取り巻く業界はさらに活況を呈しそうですね」「はい。おかげさまで」「御社の強みである○○に関する技術力をさらに高めていけば、違う業界でも、新しい可能性が広がりますね」「はい。ありがとうございます」などがよい例です。相手が肯定的に「はい」を多用するにつれ、だんだんと警戒心や拒絶感が薄れてくるのです。

一方「さっそくですが、ウチで扱っている○○という商品、ご存じでしたか?」「いやぁ。知らないです」「ん?おかしいなぁ。業界では有名なんですけど…。いま人気商品なんです。よかったら、試してみませんか?」「いや、間に合っていますので…」「じゃ。パンフレットだけでも置いて帰りますね」「いいえ。ほんとうに間にあっていますので!」という展開は、よくない流れです。相手の返答が「いいえ」の可能性が高いと考えられる質問は、極力避けるべきでしょう。

質問すればするほど、相手は心を閉ざしてしまい、悪印象だけが残ってしまうからです。このように質問次第で、商談の成否は大きく左右するのです。

仮説を立てる

いつまでも、二者択一式のままでは、話も広がりにくく、話題も尽きてしまいます。「はい」の積み重ねで、共感できる雰囲気をつくりだすことに成功したのなら、自由回答式に切り替え、相手の考えを引き出していきます。

相手を尊重しながら「○○さまの尊敬している方は、どなたですか?」や「御社の経営理念について、より深く教えていただけませんか?」などの質問を投げかけるのです。自由回答式の質問をより効果的にするには、仮説が不可欠です。

たとえば、よく耳にする質問に「なにか、お困りのことはないですか?」というフレーズがあります。残念ながら、これはあまりよい質問ではありません。自由に答えていいといっても、漠然としすぎては、相手もなにをどう答えていいかわからず、質問側の期待する回答はかえってこないはずです。

「最近、便秘ぎみなんだが…」と打ち明けられても、こちらも返答に困ります。つまり、仮説のないまま質問しても、質問自体が場当たり的となるばかりか、相手も質問の意図が読めず、不信感をつのらせかねません。

正しくは、自分なりに事前に情報を収集し、「○○の件で、お困りではないですか?」と、仮説を立ててから、質問を通じて核心に迫っていくのです。「自分の仮説が正しいかどうか確認する」という目的があると、質問すべき点も明瞭になるわけです。逆に、仮説を立てずに質問を続けても、何がいいたいのかが相手に伝わらず、質問する側の力量も推し量られてしまうでしょう。

決断を促す

二者択一式は、クロージングのときなどの最終確認や相手に決断を促すときにも有効です。「現状のままで、ほんとうにいいのですか?」とか「来月からの導入ということで、間違いございませんね?」とか「支払い条件はこのようになりますが、いかがでしょうか?」などです。

よい質問は、相手のホンネや潜在ニーズを引き出すだけでなく、相手に気づきを与え、自分の内面と向き合ってもらうことが可能です。矢継ぎ早の質問はややもすると、「尋問」や自分の主張を押しつけるような印象を与える恐れがあります。

主張を押しつけるのではなく、質問を投げかけながら相手の意思を確認し、自発的に動いてもらうことを目指しましょう。二者択一式と自由回答式の質問を巧みに使い分けることが、質問力を格段に高めることにつながるのです。


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