多くの仕事を抱えているとき、「いま忙しいんです。これ以上仕事を増やさないでください」という人がいます。ところが、「忙しい」が口癖の人ほど、ほんとうは仕事が遅いだけです。仕事の段取りや要領が悪く、ムダな時間が多いから「忙しい」を連発するようになるのです。仕事が遅い人の特徴は、すぐに取りかからない人です。
すぐに仕事に取りかからないから仕事がたまり、仕事がたまるから心に余裕がなくなり、心に余裕がなくなるから、すべての仕事がギリギリになるのです。ギリギリになるから抜けやモレやミスが頻繁に発生するのです。
「忙しい」が口癖の人、すなわち仕事が遅い人に頼んでもいい仕事をしてくれません。「忙しい」は、仕事の遅い人がよく口にする逃げ口上といえるでしょう。
昔からビジネスの世界では、仕事を依頼するのは、忙しい人に頼めという不文律があります。ここでいう"忙しい"人とは、「忙しい」が口癖の人ではなく、ほんとうに忙しい人のことを指します。ほんとうに忙しい人は、概して仕事のできる人が多いのです。
できるからゆえ、多くの仕事がどんどん舞い込んできます。ほんとうに忙しい人ほど、時間の使い方がうまく、何を依頼してもいつも驚くほど仕事が早いのです。
「忙しい」が口癖の人とほんとうに忙しい人との決定的な違いは、時間の使い方にあるからです。ほんとうに忙しい人は、どんな状況になっても、「忙しい」という言葉は使いません。
「忙」という漢字は"心を亡くす"と書くため、「忙しい」と口にするのは、とても恥ずかしいことだと認識しているからです。
仕事は正確さとともにスピードが要求されます。自分が抱えているひとつ一つの仕事を素早く処理していかなければ、あっという間に仕事がたまってしまいます。「めんどうだな」「どうしようかな」「気乗りがしないな」などとあれこれ思案を巡らせる暇があったら、さっさと素早く取りかかることです。仕事に追われるのではなく、自ら仕事を追いかけるように持っていくことが大切です。
効率的に仕事をこなすようになるための秘けつは、普通の人がする以上の仕事量を抱え込むことです。こうした尋常でない忙しさ、修羅場をくぐりぬけると、体で効率的な仕事を覚えていきます。自分の許容範囲をはるかに超える仕事量が自分を育ててくれるのです。
どんな分野であっても、プロフェッショナルの道は長く険しいといえます。しかし、心技体のなかでも、とくに「技」は磨けばこたえてくれます。
素早く仕事をこなすというのも「技」です。「技」は裏切りません。こうして習得した「技」は自分の血となり肉となって、容易には忘れないのです。「忙しい」を言い訳にしないことです。仕事のできる人ほど仕事が早く、仕事の早さと仕事の力は相関しています。忙しいときこそ、自分の力量が問われるのです。