中村一八の知心コラム


伸びる人・伸びない人

ポジティブ思考とネガティブ思考

私には、ひとつだけ自慢できることがあります。それは、「この人は将来有望だ」とか「この人は伸びる」というのがわかることです。そのほとんどが外れたことがありません。では、その人の何を見ているのか。学歴でしょうか。人柄でしょうか。それとも、境遇でしょうか。

いいえ、違います。それは本人の思考なのです。その思考には二種類あります。ポジティブな思考とネガティブな思考です。どちらが長い目でみて得するでしょうか。それは絶対的にポジティブな思考なのです。

思考は実現する

たとえば、「1日30件の飛び込み訪問をやってきなさい」など、現在の本人にとって、やや背伸びしなければ達成できない目標を与えたときの反応をみるわけです。伸びる人は「はい、やってみます」とあっさり受け止めます。

伸びない人は「えーっ?そんなのムリッすよ」と眉間にしわを寄せます。伸びない人の共通点はすぐに妥協する人です。腕組みをしたり、表情を曇らせながら「むずかしい」「ムリ」「できない」などと心の中でつぶやくのです。何ごとも「ムリ」と決め付けたことは必ず「ムリ」な結果になります。「できない」と思えば、できるものもできなくなります。ここに、伸びる人と伸びない人の決定的な思考の違いがあるのです。

かたや「やってみます」、かたや「むずかしそう」。この違いは、今後の成長過程において、恐ろしいほどの違いを生み出していきます。

思考は実現します。頭のてっぺんからつま先まで、ポジティブな思考で挑戦し続ける人は間違いなく伸びるのです。トップアスリートや一流のスポーツ選手が、試合前に頭の中で描くイメージトレーニングは、未来に向けていかにすれば「実現するか」を考える思考プロセスといえます。「成功したときのイメージ」をシミュレーションすることで、いま以上に自分のポテンシャルを引き出すことが可能となるのです。

アフリカの奥地

伸びる人・伸びない人イラスト1
伸びる人・伸びない人イラスト1

古典的なエピソードに靴のセールスマンの話があります。ある靴のメーカーの社長が新規開拓のためセールスマン二人を、アフリカの未開の地に派遣したのです。そこでは、原住民は誰も靴を履いていませんでした。それを目の当たりにしたB君は「社長、明日の便で帰ります。今回はムダ骨でした。靴を履く習慣がないんじゃ話になりませんから…」と落胆の色を隠せない様子でした。

ところが、Aさんの感想はまったく異なりました。発奮気味で報告してきたのです。

「社長!やりましたぁ!すごいです!誰も靴を履いていないんです!無尽蔵のマーケットがここにあります。どうすれば、現地住民に靴を履く文化を植え付けられるかじっくり作戦を錬りたいので、もうしばらく滞在させていただけないでしょうか。社長、ご期待ください!」

事実は同じでも、「まずはやってみよう」と積極的な気持ちでいる人と、「できればやりたくない」という消極的な気持ちでいる人では視点も気づきも異なります。悲観的な人は、順調に事が運んでいるときですら、そのことに気づきません。「きっとやれる」というポジティブな思考が、物事の本質に「気づく」という行為に発展するのです。

クレームこそチャンス

クレーム時の様子も観察してみると、「伸びる人」と「伸びない人」の違いが顕著にあらわれます。伸びない人は、クレームが発生したら「ツイてない。最悪な一日だ」と考えます。頭の中は「逃げること、うまく逃れること、火の粉を振り払うこと」を思いめぐらせているのです。一方、伸びる人は、クレームをチャンスととらえます。誠心誠意、相手が根負けするくらい積極的に取り組むため、最後はクレーム客をファンに変えてしまうのです。

自分の限界の壁

「うまくいかなかったら上司に叱られる」という考えでは足取りは重くなりますが、「うまくいったら上司にほめられる」と気持ちを切り替えると不思議と足取りは軽やかになります。ちょっとした思考の差ですが、良い結果を考えて行動すると、精神的な負担が軽減されるばかりか、自ずと積極的になります。プラスの結果を思い描いて仕事に取り組むと、驚くようなパワーがみなぎり、好結果・好循環につながりやすくなるのです。

自分の限界の壁は、実は無意識のうちに自分がつくり上げているものです。「できる」という前向きな思考を持ち続けていさえすれば、自分の限界の壁はどこまでも広がっていきます。仕事の成果とは、思考で決まります。結局のところ、どんな仕事でも逃げずに、絶対成し遂げてやろうというポジティブな思考が道を切り開くのです。

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