中村一八の知心コラム


メモをとる習慣づくり

朝礼をみればわかる

朝礼をみれば、社内の雰囲気や活力の度合いがわかります。加えて、朝礼中だれかが話しているとき、メモをとりながら聞いている人は全体の出席者のなかでどのくらいの割合を占めるかをみれば、情報共有力までわかります。メモの習慣がある社員の比率と組織における情報共有力の高さは、ほぼ比例するからです。伝言ゲームの例をあげると、その理由は明解です。

伝言ゲームとは、あるメッセージを一列に並んだチーム内で順番にひとりずつ伝えていく遊びです。当事者は大まじめに取り組みますが、何人もの人を介していくと、認識違いや思い込みもあって、最後尾の人には、最初のメッセージからかけ離れた内容に変化してしまうところが、このゲームの盛り上がるポイントです。単なる「聞き間違い」では説明できないような、言語変化に当事者たちはみな一様驚くのです。

メモをとる習慣づくり

ところが、伝言ゲームに「メモをとってもいい」という新ルールをとり入れたらどうなるでしょうか。伝言「メモ」ゲームです。聞き手が「メモをとる、不明な点は質問する、内容を復唱確認する」という指示の受け方の手順を正しく踏むようにするのです。

すると、どれだけの人を介そうとも、また話し手や聞き手の能力に関わらず、かなりの高い確率で、情報を正しく共有することができるはずです。これが、私の定義する情報共有力です。

情報共有力には、聴き取る力と伝える力の両輪が求められますが、情報を正しく伝えるには、情報を正しく聴き取る必要があります。このように、情報共有力を高める有効手段としてメモの活用法があげられますが、黄金の3つのルールを習慣化してはじめて、その真価を発揮させることができるのです。

黄金の3つのルール

ルールその1、いつも紙とペンを持ち歩くことです。いざメモしようと思ったとき、常に手の届く範囲にメモ帳とペンがないと、あたりをきょろきょろ見回し、そのあたりに散乱している書類の片隅や裏面などに、書き込むことになります。

これではメモが分散しやすく、いざそのメモが必要になって読み返そうと思っても、その書類が見つからなくなる可能性が高くなります。

ルールその2、メモを見直すことです。せっかくメモをとっても、そのあと読み返すことをしなければ、脳裏に焼きつけられないばかりか、やるべきタイミングを逸する恐れがあります。

メモをとることによるデメリットは、メモをとったことによる安堵感で、記憶に定着させようとする力が弱まることです。それを回避するためにも、その日中にメモを読み返す習慣を身につけましょう。

ルールその3、メモを整理することです。メモはあくまで手段であって、目的ではありません。行動に活かすことこそ、真の目的です。そのために、定期的にメモを整理する時間を捻出することです。

私の場合、毎朝6時〜7時までの1時間は、その時間に充てています。あらためてメモを読み直すと、会話中の大事な部分を聞き逃していたり、"わかったつもり"になっていたことに気づくことが多々あります。メモをとる時間や見直す時間よりも、はるかに長い時間をメモの整理に使っていることになります。

断片的な記憶や考えを整理することで、自分のとるべき行動が「線」でつながった瞬間は、なんともいえない心地よさと達成感を覚えます。

自分の記憶を過信しない

最後に、メモを書きとめるうえで留意すべきは、あとで自分が読み直してもわかるように書きとめておくことです。おおげさにいえば、メモをしたこと自体忘れてしまっている自分を想定して、書き残すという感覚でしょうか。自分でも読み返せないくらい雑な字で殴り書きをして、あとで読み返そうにも、なにを書いたのか当時の内容を思い出せなくなるようでは、せっかくのメモの意味がなくなります。

社内を見渡しても、メモのとり方には個人差があります。キーワードだけ羅列する人もいれば、話し言葉をていねいに書き留める人もいます。おそらく、メモのとり方に唯一絶対的な正解などないはずですが、記憶を失った未来の自分が読んでもわかるように、自分なりに創意工夫を凝らすことが大切です。情報共有力の低い組織では、部下に指示がうまく伝わらなかったり、業務上の「ムリ・ムダ・ムラ」が多発する傾向が見られます。

それらの多くは、「情報共有がなされていない」のではなく、「情報共有が正確になされていない」ことに起因しています。理解が違うと、行動の違いとなってあらわれます。

もともと人の脳は、忘れやすい構造になっています。自分の記憶力に依存する怖さを、伝言ゲームは示唆しています。メモをとる、メモを見直す、メモを整理するという3つの黄金のルールを職場に根づかせることで、自分の記憶を過信しないという個々人の慢心を排除できるばかりか、組織において驚くほど情報共有力を高めることにつながるのです。


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