中村一八の知心コラム


人には伸びる節目というものがある

チリも積もれば「力」になる

厚みが0.1ミリの新聞紙を用意します。これを半分に折って重ねると厚さは0.2ミリになります。さらに半分に折って重ねると0.4ミリです。さらに半分折ると0.8ミリ。4回目は1.6ミリ。3.2ミリ、6.4ミリ、12.8ミリ、25.6ミリ、51.2ミリ…こうして、紙を折ることを繰り返していきます。
  一見たいしたことのないように思える「紙折り」ですが、さて22回折ると高さはどのくらいになっているでしょうか。驚くべきことに、22回目には419メートル。東京タワーの高さ333メートルを優に超えてしまいます。もちろん現実には紙を折り続けることなど不可能ですが、物理的に考えると、26回で富士山を越え、50回を待たずして、地球から火星までの距離をはるかに超えてしまうのです。

人には伸びる節目というものがあるイラスト

このことはいったい何を意味するのでしょうか。自分を信じて、こつこつと努力し実績を積み重ねていくと、ある日「あれ?自分がこんなに成長している」と自分の突然変化にびっくりすることがあります。これを私は「成長の質的変化」と呼んでいます。成長の質的変化とは、ある日自分の能力が劇的に向上することです。ではなぜ、ある日急にぐーんと自分の力が伸びるのでしょうか。

やかんの水に火をつけても、すぐには見た目にはわかりません。ところが、ずっと火をつけていると、水という液体が質的変化を起こし、蒸気という気体に変わります。どんなに弱火であっても、火さえ消さなければ、水は必ず蒸気に変わります。これが沸点というものです。水温が上昇し、水が蒸気になる分岐点です。

ところが、一度やると決めたことを"沸点"まで辛抱強く続けることができない人は、成長の質的変化が永久におとずれない人です。

やかんであれ、ポットであれ、電子レンジであれ、冷たい水を一瞬で沸騰させることはできません。どんな手段をつかっても、ある程度の時間はかかるということです。世の中甘くありません。1年や2年で成就できる仕事もありません。転職を何度も何度も繰り返したり、任された仕事を途中ですぐ放り出してしまう人は、結局何も身につかず、上滑りなビジネス人生を過ごすことになります。

途中で火を消せば、沸騰することはありえないように、どんなに才能豊かな人であっても、持続力や忍耐力が伴わなければ、成長の質的変化は起きないのです。

たしかに、入社後数年は、がんばっても、足踏みを余儀なくされたり、周囲に認められなかったり、なかなか思うような成果がでないこともあるでしょう。けれど"沸点"へ到達するまでめげずに、ひとつのことを懸命にやっていさえすれば、いままで見えなかったものが突然見えてくるときが訪れるのです。

人生に近道はありません。楽なだけの仕事もないのです。そうした日々のひたむきな積み重ねが、ある日トツゼンの「成長の質的変化」を招くのです。そのひたむきさこそが周囲の敬意や信頼を集め、その道で認められる存在になり、やがては自分の財産を築かせることになるのです。

一芸8年、商売10年

何をやるにしても、事を成すにはそれなりの年月が必要となります。商いで一番大事なのは信用であり信頼です。信用を得ることを基本にして、一歩一歩階段を上がり、地道な努力を積み重ねていくことが大切だということです。よほどの才能を求められる職業でない限り、脇目もふらず10年ひたすら打ち込んでものにならない仕事などほとんどありません。逆にいえば、無心に汗を流して10年働いてきた先輩が、入社間もない新入社員にかなわないことはありえないのです。

量は質に転化する

実は、商人(あきんど)として成功する人は「継続的な努力ができる能力」を備えているという共通した特徴があります。何をやっても、すぐ倦(う)むようでは、成長もたかがしれています。大事なことは、当たり前のことを当たり前に粘り強くやり続けることです。

たとえ思い通りにいかなくても、日々あせらず力を溜めることです。継続こそチカラ。継続とは意志の強さです。これから自分が挑戦しようとすることに、どれだけ一生懸命打ち込めるか。そして、打ち込んだら好きになるまでそれを続けることです。

まさに、論語の一節にある"知好楽"のようにです。腐らずに力を磨き続けた人だけが、将来大輪の花を咲かせる可能性を持つのです。成長の質的変化は、努力に比例し、努力の継続性を求めます。

一日一日の積み重ねがいかに大きな力に変化するか。大きな成功を得るには、とにかく日々の練習が成長するための道となるのです。チリも積もれば"力"となる。これが「続(ぞく)の法則」というものなのです。

さらなる成長は、心を磨くこと

仕事に関するスキル での成長というのは、時間の長短はあっても、成長のスピードに個人差はあっても、コツコツ一生懸命仕事に取り組んで経験を積み重ねていけば誰にでも訪れます。これが「続の法則」です。人は必ず成長できるのです。また、ある時期がむしゃらにやるという「量の法則」に従えば、やがて劇的に能力は伸びていきます。

ところが、心の成長というものはそう単純なものではありません。仕事の経験や齢(よわい)を重ねるだけでは心の成長はとてもむずかしいのです。年をとると心も成長するかといえばそうではないからです。

人は年をとったり、経験を積むと、若い頃のように豊かな心を維持することはなかなか難しくなってきます。仕事に追われて、仕事を楽しむ余裕がなくなったり、心を磨くことを忘れがちになりやすいものです。それゆえ、限りなく心の成長を求めることが重要です。これが「徳(とく)の法則」です。

日ごろから心身を鍛え、心をピカピカに磨いておくことです。人間的な幅を広げることが重要です。周囲に感謝の気持で接していくと、なぜかありがとうといわれるようになります。心が豊かになったと感じるのは、どんなときでしょうか。

ひたひたと心が満たされるときって、どんなときでしょうか。いかに当たり前と思われることに対して「ありがとう」を見つけていくか。どれほど昨日と変わらぬ今日があることを「ありがたい」と感謝できるか。これらはとても大切なことです。祖先があって、歴史があって、平和な「いま」があるということです。

実際のところ、仕事ができることと人格とはまったく別問題です。少しくらい仕事ができるからといって、いい人間関係を築くことができなければ、人として本当に幸せをつかんだといえるのでしょうか。私はそうは思いません。

日々感謝を軸とした「謙虚・誠実・素直」を心掛けていなければ、なかなか心の成長は難しいのです。「彼は仕事はできるが、一緒に仕事がしたくない」と評価されるようでは、人間的に魅力があるとはいえないでしょう。

どんなスポーツでもいい選手になるためには、心技体のなかでもとくに心に力点を置かねばならぬといわれています。いい仕事は心身のバランスの上に成り立ちます。重役だからといって、人間的に優れているとは限りません。

肩書きのない平社員でも、立派な人間はたくさんいます。このように、人には伸びる節目というものがあります。それが、継続こそ力なりという「続の法則」であり、 量が質に転化するという「量の法則」であり、心の成長を目指す「徳の法則」なのです。


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