これから、コンサルタントを積極活用したいと考えている経営者の皆さまに、コンサルタントを活用するとはどういうことを意味するのか、その報酬についてはどう考えるのか、ご理解をより深めていただきたいと願っています。
あるメーカーの工作機械が突然止まってしまいました。そこで、ベテラン、若手問わず、多くの従業員がそれを直そうと躍起になりましたが、機械はいっこうに動きません。みんなの努力の甲斐も空しく、やがて日が暮れてしまいました。
翌朝、社長は修理屋を呼ぶことを決意しました。到着した修理屋は数分間その機械をじっと見つめ、ある部分におもむろに手を伸ばしました。
すると、機械は見事動きはじめたのです。社長も従業員も大喜び。でも、次の瞬間社長の顔がこわばったのです。手渡された請求書を見ると、3万円也と記されてあったからです。
「ちょっと待ってくれ。君はここへ来て、まだ10分もたっちゃいない。しかも、何か部品を取り替えたわけでもないし、何か道具を用いたわけでもない。いったい機械が動かなかった原因は何かね?」
「はい。よく観察すると電源プラグが抜けていることに気づきました。それで私が差し込んだまでです」
「なにぃ!それならなおさらじゃないか。3万円という請求金額はいくら何でも高すぎるよ」
「ええ。確かに社長のおっしゃることはわかります。しかし、修理屋というのはどんなに時間をかけても、修理できなければ仕事になりません。修理屋に求められるのは、しっかり直すことだけです。うまく直ればきちんと報酬をいただきますが、いくら一週間不休不眠でがんばってみても、直すことができなければ一文のお金も得られません」
このエピソードについて、あなたはどう考えますか?修理屋の主張はいかがですか?仕事でいちばん大切なことは、成果を出すことです。コンサルタントの場合、成果とはクライアントの問題を解決することです。つまり、この修理屋の主張と同じなのです。
いくら屁理屈をこねても、問題解決できなければ「コンサルタント」としての存在価値は限りなくゼロに近づきます。解決してなんぼの厳しい世界で、どれだけ時間を要したかなど、ほとんど意味をなさないのです。 現場を歩けば、どこが問題なのか瞬時に見抜き、その問題を解決する具体策をひねり出すのがコンサルティングのプロの芸当です。確かなことは、熟練工の"匠の技"同様、誰もが簡単にできる仕事ではないということです。
修理屋にせよ、"問題解決屋"であるコンサルタントにせよ、外部の優秀な人をうまく使える経営者は、知恵に対してきちんと評価しようとする人です。知恵やノウハウの価値に理解を示そうとしない人は、コンサルタントをうまく活用できないばかりでなく、コンサルタントも「この人のためなら」と積極的に行動することもないでしょう。
これらのコンセンサスを得られないまま仕事を進めると、時が経つにつれお互いが不信感をつのらせることとなり、仕事の成果もでるはずがありません。一方、コンサルタントにもインフォームド・コンセント(十分に説明を受けた上での同意〉が求められます。コンサルタントを活用するとはどういうことを意味するのか、その報酬についてはどう考えるのか、お客さまに事前に十分説明し、十分にご理解いただいたうえで、コンサルティング契約を結ぶことが重要なのです。