コンサルティングファーム・ニューエアAboutNewairニューエアについて

ホームニューエアについてトップインタビュー<守破離とプロ経営者

トップインタビュー【一問一答】守破離とプロ経営者


-----「守破離(しゅはり)」とは?


「守破離」とは、道を極めようとするときの成長過程を示した概念です。もともと「守破離」は能を確立した世阿弥の教えであり、柔道、剣道、空手、合気道などの武道に限らず、書道や水墨画などの稽古事、茶道、華道、舞踊、 彫刻、歌舞伎といった伝統芸術の世界で広範囲にわたって語り継がれている言葉でもあります。


トップインタビュー【一問一答】中村一八

-----それぞれの意味は?


「守」は基本の型を見につける段階、「破」はその型を破って応用する段階、「離」はそれらに創意を加え、自分独自のものを追求し確立する段階です。型を守り(基本の習熟)それを破り(応用)、そして最終段階として型を離れる(創造)。どんな道であれそれを極めていくためには、順を追って段階を踏んでいかなければならないというのが「守破離」という考え方なんです。「守破離」はプロになるための基本的な心得といえますね。


-----「型」について詳しく教えてください。


「型」とは、昔から代々受け継がれているものです。どの道にも必ず基本の「型」というものがあります。茶道には茶道の、華道には華道ならではの踏み外せぬ型が存在します。囲碁将棋でいえば、定石(定跡)が「型」に該当しますね。定石とは、先人たちが道を極めていく上で、あらゆる無駄を省き最もうまくいく要領を長年にわたって積み上げてきたいわばノウハウの集大成といえます。将棋が強くなるには、プロのまねをすること、つまり「型」である定跡を覚えることが一番の近道なんです。


-----「守」が大切だといわれる所以ですね。


「守」は特に重要です。ここは、師匠やお手本を見つけて「まねる」段階です。学ぶは「まねる」こと。この段階は、好むと好まざるとにかかわらず、「初心にかえって」師の教えを忠実に守ることが大切です。毎日毎日稽古(けいこ)を続けて基礎となる「型」をしっかり身につけます。当たり前のことが当たり前にできるようになるまで、膨大な時間とエネルギーを傾けなければなりません。ここが最初で最大の関門です。目新しさはないし、単純な基本の繰り返しばかりですから、すぐ飽きてしまうし、イヤになる。しかし、小さいことの積み重ねが何より大事なんです。


わかりやすくいえば、子どもの学力を伸ばす方法と同じなんですね。子どもが本当の学力をつけるには、子どもの成長段階に応じて、基礎をしっかり教えること。具体的には、学力の「守(基礎)」に当たる「読み書きそろばん(計算)」に力を入れることです。基礎が身についてなければ、学力は伸びない。本が読めなかったり、字が書けなかったり、計算ができなかったりしたら、専門能力はいっこうに身につきませんね。


-----一方で、すぐには「守」の効果はあらわれにくいといえます。


「読み書きそろばん」を反復訓練するなど、たとえ「守」の重要性が理解できなくとも実際に行動に移すことですね。プロはみな「守」からスタートします。プロボクサーでも手打ちそばの達人でも「守」からです。「守」を続けるうちに、それが原点だということがわかってくればしめたものですね。


-----では、「破」で注意すべきは?


「守」によって型を完全に体得した次は、いままで身につけた型をいったん破り、応用の段階へとコマを進めます。これが「破」の段階です。「破」は、「守」の上に成り立つことが前提です。モノには順序があります。いきなり「守」を飛ばして、応用の段階である「破」を試みても決してうまくいかないものです。


-----それって"我流"のことですね。


ええ。自己流で人の意見を聞こうとしないのはもってのほか。結局、我流は遠回りのモトなんです。一生懸命努力しているがなかなか上達しないというのは、「守破離」の手順が間違っているケースが圧倒的に多い。似て非なるものに「型なし」と「型破り」があります。無手勝流でやるのが「型なし」で、型を完全に習得した上で、新しい創造のために、意図的に型を破っていくのが「型破り」です。「守」を完全にマスターしてから、次の「破」に進むという順序が大切なんですね。


-----当然のことですね。


いや、これは頭ではわかっていても実際にはなかなか難しいものです(笑)。二代目経営者に陥りやすいのは、社長就任後、先代とはまったく違うスタンスでいこうとすることです。父親を超えようとする意識が強すぎるせいか、「守」を飛ばしてすぐに「破」をやろうとする。でも、やはりうまくいかない…。


-----しかし、従来通りのやり方では…。


確かに「伝統だけに固執せず、革新を続ける」べきですが、大事なことは、先代の考えを否定しないということです。先代を否定することは、会社の歴史そのものを否定することにつながる恐れがあります。「先代を否定することなく、変革を推進する」。そんな意識を持つことが、成功の秘訣なのです。


-----そのためには?


先代の気持ちや考え方をまず100%理解することですね。少なくとも理解しようと努力する。それには、創業から現在に至るまでの企業の歴史をまず真摯(しんし)に学ぶことが有効です。二代目には二代目のやり方があって当然ですが、独自性というものは徹底した基本の上に開化させていくものなのです。優れた後継者はしっかりと型を習熟した後に自分なりの"芸風"を築き上げますから‥。


トップインタビュー【一問一答】中村一八

-----つまり、経営も同じということ?


経営というものを「経営道」ととらえるなら、経営者もまたプロフェッショナルでなければならないんです。剣道や茶道などおよそ「○○道」と名のつくものすべてがそうであるように、「守破離」の順序をきちんと踏まないと、どんな素晴らしい資質をもった経営者だって、プロの「領域」には近づけないんです。定跡を完全にマスターしなければ将棋のプロには絶対なれないのと同様、プロ経営者になるには、プロ経営者から実際に「型」を学び、「まねる」ことが不可欠です。


-----それこそ、プロ経営者への道ですね。


基本をしっかり学んでから、段階を踏んで、自分のものとして体得する。これが経営能力を高めるコツです。経営の本質を凝縮したものが経営の「型」といえます。独自の応用ができるようになるまで、いくつかの越えなければならない「型」があるというわけです。


-----そして最終の着地点が「離」の段階なのですね。


いいえ。プロ経営者への道に、終わりなどないんです。「離」を極めたら、また「守」の範囲を広げてスタートです。トッププロになればなるほど、「この頃は基本に忠実に、素直にやることを心掛けている」と熱心に語られます。これは「守破離」の意味深さをよくあらわしているといえますね。米大リーグで活躍するイチローや松井秀喜選手が、海外に活躍の場を求めたのも、日本のプロ野球界で「離」まで到達したのち、またベースボール発祥の地で「守」を学びたいとの強い思いからでしょう。大リーグに行って環境を変えることで、基本をもう一度学ぶ。こうしてトッププロとしての基礎固めが再度できるのです。「このままでも、別にいいんじゃないか」と現状に満足しきったときがリーダーにとって一番怖いんです。


-----経営者自身の危機意識の欠如?


というより、経営に対するどん欲さが失われていくという感じでしょうか。企業が業績低迷に陥りはじめる最大の要因は、実は経営者自身の"気の緩み"にあると私はみています。売り上げが順調に拡大したり、事業が軌道にのってくると、創業時や社長就任時の意気込みも次第に薄れていく。「何としても企業を成長させ続ける」という経営者の執着心が好結果を生みだす原動力となるのですが、長期政権であったり、年を重ねたりすると、粘りが欠けてくるんです。これは危ない。経営者自身がいつも新鮮な気持ちをもって、意識的にモチベーションを上げる方法を見つけていく必要があります。


-----それと、業績は自社を取り巻く「業界」にも影響されますね?


実は、そうじゃないんです。どのような業界でも、経営者が優秀であれば会社を「進化」させ続けられますし、そうでなければ衰退の一途をたどります。それ以上でもそれ以下でもありません。この"事実"はなかなか信じがたいことですが、私は今まで、経営コンサルタントとして何千という経営者にお目にかかり、一緒にお仕事をさせていただくと、それが痛いほどよくわかるんです。


業界によって「おいしい業界」と「まずい業界」に分かれるのではなく、経営者によって「いい会社」か「悪い会社」かが決定づけられるのです。企業は経営者を映す鏡であり、経営者の実力が企業の盛衰を決めてしまうのです。企業が伸びるのも、潰れるのも「業界」うんぬんではなく、すべて経営者の実力次第だということを私たちは肝に銘じるべきですね。だからこそ、常に経営者の自己研鑽が必要なのです。企業は、家業から企業へ、企業から一流企業へ、成長する過程で必ず転換点を迎えます。その転換点を克服するためには、会社のトップ、経営者自身が変わろうとする覚悟が必要なのです。


-----すると、結果がでないのは経営者の努力不足…。


経営能力が不足しているか、経営者としての価値が「劣化」してしまったか、そのどちらかです。これからは経営者もプロの時代です。経済が好調な時はアマチュア経営者で十分ですが、組織が壁に突き当たった時、それを打開していくのはプロの意識を持った経営者といえます。


-----具体的に、経営者の「資質」について教えてください。


経営者にとって、求められる「資質」は3つです。第1はイヤな話に耳を傾けられること、第2は人にパワーを与えられること、そして第3は卑しくないということです。この3つは、時代がどれだけ変わろうとも、経営者に求められる絶対普遍の資質といえますね。


-----まず、第1の「イヤな話に耳を傾けられる」についてですが…。


自分にとって、会社にとって、不都合な話に耳を傾けられるかどうか。これで経営者の「資質」がハッキリわかります。社長になりたての頃は、幹部や現場の意見に耳を傾け、周囲に教えを請おうとしていた経営者も、数年もたつと自分の考えに異論を唱えるものを飛ばしたり、悪い情報に過敏に反応したりして、気付くと暴君化しているケースが多い。こうしたトップの"劣化"に比例して、企業も転落への道を突き進むことになるのです。


-----かつて、よく人の話を聞いていた社長が、なぜ、豹変(ひょうへん)してしまうのでしょうか?


権力のせいです。社長の権力というものは絶大です。その絶対的権力を手に入れ、その恐るべしパワーを実感するにつれて、「自分は偉いし、何でもできる」と感覚が麻痺してくるのです。周囲もチヤホヤしてくれます。こうして、人が豹変(ひょうへん)してしまう。ところが、本当に優れた経営者はココに一番気を付けるんです。


社長就任と同時に、わざと耳の痛いことを自分に進言してくれるブレーンを身近に置くことからはじめます。自社への厳しい批判や社員の要望に耳を澄まし、多くの方の忠告やアドバイスを真摯(しんし)に受け止められる度量の広い人が、経営者の「資質」をもった人といえますね。また、そうでなければ、経営者として失格なんです。名経営者といわれる人たちは、"暴走"して独善者にならぬよう、自分に対する反対意見をいってくれる人をとても大切にします。


-----経営者が本当に聞く耳をもっているかどうか、何か見分け方のようなものはありますか?


リトマス試験のように、簡単な実験でわかります(笑)。経営者の知っている情報をわざと話してみるのです。そのとき、どんな反応を示すか。優秀な経営者であれば、すでに自分が知っている情報に対しても、イライラしたり、不快感を示したり、急に口を挟んだりしないものです。


-----なかなかできないことですね。


経営者が的確な判断が下せなくなるときは、情報が遮断されたときです。とくに悪い情報が正確に上層部へ伝わらないようになると、組織が腐敗しはじめることをプロ経営者たちは知っています。「知らなかった」では済まされないのが経営者の責任というもの。そのため、多くの人から助言がもらえるように、ますます謙虚、ますます素直に人のアドバイスを熱心に聞くようになっていくんです。御(ぎょ)しやすい部下を好み、自分に都合のいい意見ばかりいってくれるイエスマンで固めようとする社長は、プロ経営者には絶対なれません。経営者が裸の王様になったら、会社は衰退まっしぐらです。


-----さて、第2の資質「パワーを与える」についてですが…。


意外と見落としがちなのがコレです。周りにパワーを与えられる。これこそ、経営者にとってきわめて重要な資質といえます。自分自身がバイタリティーにあふれている経営者はこの世にごまんといますが、周囲の人々にバイタリティーを与えられる人は極めて稀なんです。人をやる気にさせたり元気にさせたり、人に勇気を与えたり…。そんなパワーを持つ社長ならホンモノです。パワーを与える人の周りには、必ず人が集まってくるのです。


-----第3の資質についてですが…。


経営者に卑しさがあってはダメですね。人は感情で動きます。私利私欲を追求したり、お客さまに誠意がなかったり、社員を大切にしない経営者では、どれほど卓越した経営手法を駆使したところで、誰もついて行こうとは思わないはずです。徳のない経営者では、投資家やお客さまに多大な迷惑を及ぼすだけでなく、社員の努力が報われないのです。


-----食品の賞味期限を偽ったり、輸入肉を国産と偽装したり、わいろを受け取ったり、モラルの欠如した経営者ではダメだと…。


欺瞞(ぎまん)行為は会社を滅ぼします。経営者の資質とは、経営能力に加え、高い品性を兼ね備えているかどうかで決まります。経営者とは、四六時中いつもどこかで誰かに見られているものなのです。パブリックカンパニーであればなおさら、外からの視線が真っ先に集まり、その一挙手一投足を周囲から凝視されています。市場や社会からの視線に気づかなければならない。社員の経営者を見る目も厳しくなります。


ですから、「道理に外れたことをやってはいないか」「人として恥ずかしいことをしていないか」を絶えず自問自答することが大切です。損か得か以前に、人としての正しい倫理観を守ること。そして、倫理観をもった行動をすること。経営者として何より大事にしなければならないのは、この倫理観と道徳観といえるのです。


-----ところで、同族経営についてどう考えますか?


同族か非同族か。どちらが良いか悪いか。そういう話はナンセンスです。同族であっても、経営能力の高い人なら経営を任せればいい。幼い頃から創業者である父の苦労や仕事ぶりを間近に見て育った二世経営者は、経営者の気概を存分に吸収している強みがあります。ただし、絶対やってはいけないのは、経営者としてふさわしくない人を、「息子」という理由だけで世襲させることです。


-----最後に、経営のプロとアマでは何が違うのでしょうか?


正しい価値観をもちながら、常に的確な判断を下し、しっかり結果を残すのが経営のプロです。プロは結果がすべてですから、社長個人の事情は斟酌(しんしゃく)されない。今後、厳しい経営環境のなかで、きっちり会社のかじ取りができるプロ経営者が求められています。「守破離」は自分をより高い次元に成長させる重要なプロセスといえますね。私は経営の「守破離」を大事にしたいと思っています。


「コンサルティング」に戻る 「失敗とどう向き合うか」に進む

ページTOPへ戻るホームニューエアについて業務案内採用案内コラムお問い合わせサイトマップ
Copyright (C) 2002-2015 Newair Corporation.All Rights Reserved.