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トップインタビュー【一問一答】パワーモーニング


トップインタビュー【一問一答】中村一八

-----人生の成功者ほど「朝」をとても大事にされます。


毎朝6時に会社につくと、電子ポットの水を入れ替え、沸騰させています。これが、私の日課です。社員が朝一番に温かいお茶をすぐ飲めるように、ちょっぴり気を使っています。ミーティングが毎朝7時から始まりますので、それまでの時間はその日の仕事のプライオリティ(優先順位)を立てたり、自分のための時間として有効に使うようにしています。朝のうちに今日一日の仕事の流れを考えるのです。


-----畏敬の念さえ覚えますが…。


日々の仕事に忙殺されているとどうしても視野が狭くなります。スピードが要求され、慌ただしい毎日を私たちは送りがちですが、ふと立ち止まって考える時間を持つのに、朝のひとときは極めて有効です。ほんの少しの時間、お客さまと自分のつながりを改めて見つめ直してみたり、昨日の出来事を振り返ってみたり…。私にとって、朝の時間はぜいたくな心の時間となっているような気がします。朝型に身を置こうとするのは、物思いにふけってみたり、じっくりと考え事をする環境としてこれ以上のものはないという自負からなんです。


-----朝の全体ミーティングもこうした考えからですね。


これは私が提唱しました。仕事を個に依存するのでなく、組織全体をレベルアップさせなければ、近い将来会社はダメになるという強い危機感があったからです。


-----危機感ですか?


コンサルティングは労働集約型ビジネスの典型といえます。会社というものは、そこで働く人の「質」で決まる。人の「質」が業績を大きく左右するのです。つまり優秀なコンサルタントをどれだけ抱えているかで企業価値が決まってしまうんですね。


-----なるほど、品質維持がきわめて難しいのがコンサルティングの世界だと言えますね。


ええ。コンサルタントの質が一度落ちてしまうと、「あそこはダメだ」という噂があっという間に広がります。信頼こそ最も重要な資産。顧客に長期的な価値をもたらすことが私たちの"生命線"ですから、コンサルタントの「質」だけは落としてはならないんです。


-----まさに、企業は人なりです…。


資産の持たない、人材こそすべてだという私たちのような組織では、「人」がほんとうに命となります。人材こそが、企業のかけがえのない財産です。だからこそ、私たちのように「価値ある助言」以外に生産すべきものがない組織が、確実な成長を遂げるためには、人材育成に勝るものはないと考えているのです。ところが、コンサルタントはただでさえ忙しい職業といえます。必ずしも、終日会社にいる必要はない。"売れっ子コンサルタント"になると、ほとんどオフィスに顔を見せない状況が続きます。優れたコンサルタントになればなるほど、クライアントから引っ張りだこで、さらに多忙さは加速します。


-----これでは、ある特定の個人だけノウハウが蓄積されて、組織全体としては強くならない。


そうです。それと、もうひとつ注意すべき点があります。いくら優秀な人であっても、知識の垂れ流し、アウトプットばかりやっていると、コンサルタントとしての価値がすぐ陳腐化してしまうことです。あの先生の話はいつも同じで、「賞味期限切れ」と思われてはおしまいですからね(笑)。新しい情報や知識を常に取得し、知的価値をクライアントに提供するのが私たち。"鮮度"を維持するには、絶えず勉強し、絶えず研鑽(けんさん)を積むことが肝要です。


-----本当に、足並みを揃えるのが難しいですね。


正直このジレンマに悩みました。しかし、その多忙な人たちでも、一同に集うことができる唯一の時間帯があると思いついたのです。


-----それが、始業前の朝だったというわけですね。


はい。朝の時間に目を付けたのはこうした理由です。ひとりの知恵では限界があるのも事実。そこで、朝の時間を有効活用することによって、「知恵の共有」や「考える場」を創り出しています。知識を習得するばかりでなく、コンサルティングにおける実戦で、脳を鍛錬し「考える力」を養うのです。


-----仕事はIT(情報技術)を駆使されていますが、コミュニケーションの手法は極めてアナログ的ですね。


携帯メールやインターネットのおかげで、人と会わなくても、簡単に意思疎通ができるようになりました。便利な時代です。でも、意識しないと人との「対話」量がどんどん少なくなる。だからこそ、顔の見える社員との対話、一緒に時間を過ごすコミュニケーションが重要になってくるのです。上司・部下の関係を超えて酒を酌み交わし、ビール片手に人生の夢や志について話し込んだり、共に会社の未来を語り合うことも大切なのは、こうした理由からです。


-----朝の最大の魅力は?


思考が途中で途切れないことですね。電話も鳴らないし、お客さまが訪れる心配もない(笑)。


-----でも、会議が多い会社は良くないといわれますが‥。


もちろん、ミーティングはただやればいいってもんじゃない。ピントはずれの討論は時間の無駄です。情報をオープンにし、若手の声を積極的にくみ上げるなど、回数や時間の長さではなく、ミーティングの質をいかに高めるかがポイントになります。談論風発で盛り上がることも多くとても楽しいのですが、私の意見が通るとも限りません。狙いは「知」を集めた組織づくり。互いの知を共有し、新しい知を創造することにあります。


トップインタビュー【一問一答】中村一八

-----いかにプロをつくるかですね。


いや、プロを誕生させることが最終目的であってはならないんです。プロとして市場で活躍できるようになった後の方がずっと大変ですから…。


-----では、プロには何が必要なんでしょうか?


「堪え忍ぶ」心です。それをどこまで持ち続けられるか。プロとして市場で通用するようになってから、その後いかにプロらしさを堅持し続けられるか。それこそがもっとも重要なんです。いつまでも仕事への情熱を燃やし続け、その上で人間力に磨きをかけ続けること。技量を磨くだけでは「半人前」です。人としてバランスのとれた成長が期待されるのです。


-----掃除も朝全員でするとか?


朝のミーティングが終わった後、社員全員で掃除をします。私の担当はトイレ掃除です。30分間トイレをピカピカに磨くことに没頭します。私のお気に入りの道具は、業務用のスチームクリーナー。丹念に30分間集中して一気にやってしまいます。朝から体を動かすとすがすがしいし、オフィスもきれいになって、最高に気分がいいんですよ。それより何より、社員との「愛犬のポチは元気?」とか「彼女と仲直りした?」などのインフォーマルな会話も弾みます。


-----ここでも「対話」重視ですね?


ニューエアでは一日の仕事のはじまりは「対話」と「掃除」からです。掃除をするとよくわかるんです。創意と工夫でやっているか、誰も気づかないところに目を向けられるか、好奇心や向上心があるか…。掃除のきちんとできる人は、仕事のできる人です。


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