ホーム<コラム<中村一八のスペシャル対談<第2回/松本大さん<一流と二流の違い
【中村】ところで、プロと呼ばれる人たちの中にも一流の人とそうじゃない人がいるわけですけど、一流と二流の違いって何でしょう?
【松本】金融の世界に関していうなら、クレディビリティ(信頼性)じゃないでしょうか。超一流と、一流半くらいを比べた場合に、金融に関する知識とかテクニックというのはほとんど変わらなかったりするんですね。何が決定的に違うかというと、超一流の人は、ウソをつかないんですよ。
【中村】違いはスキル面ではなくて人間性にあると?
【松本】人間性とまではいいません。二流でも人間的にいい人はいくらでもいるわけですから。そうではなく、仕事に関するクレディビリティとかインテグリティ(正直さ)があるかどうかということです。
たとえば、二枚舌を使わない、くだらないかけひきをしない、裏切らない、ということ。そういうプロとしての威厳というか矜持(きょうじ)というものが、一流の人にはあるわけです。それはウォールストリートでも同じことがいえるでしょうね。
【中村】最近はコンサルタントを目指す人が急増しています。 でも、とかく分析手法を覚えたり、論理思考を鍛えたりすることに目がいっちゃって、肝心のハートを磨くことを忘れがちなんです。コンサルティングとは人の心をつかむことなんです。
仕事で成果を出すのは当たり前。私が一流と呼ぶのは、人の心をつかんで、「次回もゼッタイこの人でなきゃね」と思わせるようなコンサルタントです。そこには、どんなに知識やテクニックを身につけても、クレディビリティやインテグリティがないと無理ですからね。ところで、プロの世界には徒弟制度がつきものですが、素晴らしい師匠に巡り会わなくては一流にはなれないと唱える人もいます。そのあたり、松本さんはどうお考えですか?
【松本】僕は、誰かの影響を受けるってことはあまりないんですよ。だって、自分は自分だから、自分のやり方があるわけですよね。現存する人でも、歴史上の人物でもいいのですが、僕はあらゆるところから「部品」を集めてきて、自分なりに創るべきだと思っています。そういった意味では、僕には師匠というのはいないですね。でも、伯楽と呼べる人は何人かいました。
【中村】師匠じゃなく伯楽ですか?
【松本】伯楽というのは引っ張ってくれる人というか、場合によっては導いてくれる人でもありますね。かつてゴールドマン・サックスに勤務していたときに、ジェイコブ・ゴールドフィールドという天才がいたんですが、彼は僕をトレーニングしてくれて、いろんなことを教えてくれて、僕を認めてくれた人なんです。
それを師匠というのかもしれないけれど、それはあくまでもビジネスの部分だけであって、生き方とかに関して何かをいわれたわけじゃない。何というか、ほんとうの伯楽というのは、貸し借りはないものなんですよ。徒弟関係だとそれがあるじゃないですか。
【中村】なるほど。
【松本】僕は伯楽から受けた恩は伯楽に返すのではなく、受けた恩は自分が小伯楽となって後世に伝えていくものだと考えてるんです。いわば親子の愛みたいなもので、それは必然として下に流れていくんですよ。だから特定の師匠をもつ必要はないけれど、伯楽はいたほうがいいと思っています。
【中村】本日は大変興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今後も松本大さんのますますのご活躍を心から祈念しています。